京の特集No.5

平安の世に開花した、女流文学の礎を巡る旅

~世界的大作家~
紫式部コース
イラスト-紫式部
下鴨神社(源氏物語の舞台)~幸神社(平安京の鬼門の話)~ 廬山寺(紫式部邸宅址)~染井(京都三名水)
~はかなき絶世の美女~
小野小町コース
イラスト-紫式部
醍醐寺(京都最古の平安時代の五重塔)~ 隨心院(小町化粧井戸、供養塔、百歳像)~小町カヤ(百夜通いの悲話)~勧修寺(平安時代からの庭園)
~元祖エッセイスト~
清少納言コース
イラスト-紫式部
即成院(那須与一)~来迎院(空海の独鈷水)~泉涌寺(清少納言歌碑)~雲龍院(写経と抹茶、お菓子)
~情熱の恋愛歌人~
和泉式部コース
イラスト-紫式部
錦天満宮(菅原道真)~誠心院(和泉式部寺)~誓願寺(歌舞の菩薩となって出現)~矢田地蔵(小野篁)~六角堂
悠久の時を経て、
今もなお、京の町に息づく平安の時を生きた
女ゴコロの足跡を尋ねて

町家の中の源氏物語

京町家は多くは近代和風建築です。蛤御門の変で消失した街を明治に建直したからです。だから、それまでは許されなかった身分格式を超え、新時代の様式も積極的に取り入れたハイカラなデザインが町家の魅力です。この明治から大正にかけて、ちょうど古典文学の研究が始まり、出版業の発展によって多くの人々に源氏物語などの平安文学が普及しました。新時代の眼で、京都の女流文学を再発見するこの作業には、明治・大正・昭和戦前期を生きた与謝野晶子など女流文学者の力が大きかったのです。大正から昭和にかけても、晶子や潤一郎の現代語訳によって源氏物語にふれた人は多く、平安の美意識が絵画や染織、工芸を通じて、京都の暮らしを彩ってきました。こうして源氏物語は、町家の中で暮らす女性たちの身近なものとし、その美意識が現代京都の女性たちの心の基調に形づくられてきました。

京町家のお座敷には、真行草三種類のしつらえがあります。中でも草のお座敷は、数奇屋風であっても雅さが尊ばれる、町家の一番奥、身内の女性だけが華やかに集まる部屋です。そこでは京女たちが源氏香をたき、お庭の四季を楽しみつつ、平安文学の世界を堪能していたのでしょう。千二百年の歴史の中で積み重ねられていた京都の文化の中から、近代の女性たちがもっとも好んだ平安文学、平安の女性たちの美意識は、こうして伝統工芸や町家を通じて現代の京都に蘇ってきました。

21世紀の今日、源氏物語千年紀に再び平安の女流文学が見直されようとしています。京町家を愛好する現代の女性たちは、より美しくより京都らしい装い、味わい、町並み、そして生き方を求めて源氏物語の世界に向っています。京都の町家は、そんな女性たちをはんなり迎えます。

宗田好史(京都府立大学)

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